2016年02月09日
2)バイオマスへの罪悪感を大切に・・・ (代表理事 森みわ)
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あっという間に1月が終わってしまい、焦りまくりの森みわです。1か月が、幼少の頃よ
りも早く過ぎてしまうのは、きっと残りの人生の時間が短くなる事で、1か月のパーセン
テージが大きくなることに起因するのだ、というのが私の持論なのですが、それで納得
出来ていた時代も終わり、もうそんなに残された時間は短いのか!と最近は慌ててしま
う程です。そんな今日この頃ですが、昨日ご縁があって墨田区で槇文彦さんの講演会を
聴講させて頂きました。87歳になられた槇さんを前に、“僕たちまだ若手だから”と
建築士会会長の中村勉さん(64歳)。おかげで私は、建築家という人生のスタートを
切ったばかりの赤子の気分になることが出来たのでした。
さて、先日は幸運にも知り合いの庭師さんから、我が家の来シーズンの薪の原料を頂く
ことが出来ました。薪ストーブライフ4年目の森家ですが、薪集めはもっぱら夫の仕事に
なっていたため、切り倒されたばかりの生々しい幹を前にした私は、ついさっきまで
生きていた木を燃料化して消費する事にとても罪悪感を覚えました。捕食者として、
消費者として、誰もが見なくてはいけない現実を見ただけなのに。その木がドロドロの
化石燃料と化してから、もしくはペレットのような加工品に化けてから頂けたならその
罪悪感は大分薄れたでしょう。それは走り回る鶏を自分で絞めて羽毛をむしって細切れ
にするよりも、スーパーに並ぶ鶏ひき肉を買った方が良かった的な身勝手な話かもしれ
ません。
そう言えばドイツで暮らしていた頃は環境汚染の生々しい様子を雑誌やテレビで沢山
見せつけられました。動物が肉になる様子を見せられたドイツ人の子供が菜食主義に
なってしまうのと同じように、大人もそれでオエッとなって、もうエネルギーなんて
使いたくないと心底思ってしまうでしょう。消費を抑制するのにこんなに効果的な方法
は無いなと心底感銘しましたが、それを先日再び痛感してしまった訳です。
“見なければ良かった。”そう感じてしまう程悲惨な現状が私たちの周りを取り囲んで
いますが、自分たちの生活を取り巻く全ての現状を知りたいかどうかが、現状を良い方
向に変えたいという意思があるかどうかのバロメーターそのものなのでは?と感じます。
話を元に戻しましょう。罪悪感と言えば、バイオマスエネルギーの“使い過ぎ“に警告
を発したのが昨年のパッシブハウス研究所です。日本国内でバイオマスエネルギーの
地域暖房が少しずつ広がり始めた矢先の事なので、タイミングとしては最悪ですが、
暖房負荷がべったりと残っている住宅(断熱気密が不十分な日本の大多数の住宅がそれ
に当てはまります)において、大半の国民が暖房をバイオマスエネルギーで賄うよう
では森林資源が枯渇してしまうという話は以前からありました。また、給湯に関しては、
その需要が通年に渡ることから、暖房よりも太陽エネルギー(太陽光発電もしくは太陽
熱温水)との相性が良いということも考慮され、PHPP version 9.3ではバイオマス
エネルギーのPER(1次エネルギー/2次エネルギー変換係数)はこれまでの0.2から
1.1に修正となり、その適応は床平米当たり20kWh/m2aまで(パッシブハウスクラス
であれば、正々堂々とこの範囲内で暖房が行えるレベル)となりました。現在ヨーロッパ
では給湯対応のバイオマスストーブのバリエーションも増える中、これは耳が痛い情報
です。年間暖房負荷25kWh/m2aの家に住む私自身、全ての薪をカーボンオフセットに
使えないという事を意味しますので、先日覚えた罪悪感、大切にしていきたいと思い
ます。しかしながら、バイオマスエネルギーよりも太陽エネルギーが優先されるべき、
というのが今回の改定のメッセージであると解釈でき、薪・ペレットストーブ導入より
もまず、太陽に素直なパッシブデザインが奨励されるべきですので、私も異存はあり
ません。 そして更に着目すべきは、ある住宅において夏に使いきれぬほどの太陽光
発電量があり、その余剰分を冬に系統から買い戻したところで、冬の暖房エネルギーが
再生可能エネルギー由来だという主張も全くもっておかしいという見解が、パッシブ
ハウス研究所から明確に出されたという点でしょう。やはり日本の周回遅れは否め
ません・・・。
今月より、全てのパッシブハウス認定物件はPHPP version 9.3で計算を行いますので、
従来のバージョンからの改定が日本の物件にどのような影響を及ぼすのか、皆さんには
随時報告していきたいと思います。また、3月4日の6周年記念大会では、パッシブハウス
認定を真剣に検討されている方を対象にした、説明会を行います。
現在認定待ちの戸建て住宅物件(2016年2月現在):
小金井PH(竣工)、南山PH(竣工)、大宮PH(竣工)、米原PH(着工)、
松山PH3(着工)、秋田PH(着工)、高松PH、岡山PH、熊本PH